僕たちは、いつから明日が来ると錯覚していたのだろう。【コロナと100日後に死ぬワニに学ぶ】
■□『コラム第17回目』■□
▶︎この記事の執筆者:たくぼく(@takuboku1018)
嘘のようで嘘じゃない本当の話。
2020年、世界はコロナでかき乱された。
僕たちは、いつから明日が来ると錯覚していたのだろう。https://t.co/zH3lWXXRfz
— たくぼく@象使い🇹🇭🐘 (@takuboku1018) March 21, 2020
2020年3月21日。
衝撃的なニュースが僕の耳に飛び込んで来た。
バンコク都知事が、スーパーマーケットとコンビニエンスストア、飲食店(持ち帰りのみ)などを除くほぼ全ての商業施設を3月22日から4月12日まで閉鎖することを発表。
自炊をしない僕には危機だ。
急いでショッピングモールに大量の食料品を買いに行き、見た事もないほどの長蛇の列に並び、やっとの思いで帰宅。多くの冷凍食品や非常食品は既に商品陳列棚から姿を消していた。



現在は午後5時を少しまわったところだ。
様々な情報が錯綜する中、バンコク都庁は上のニュースについて本当だと主張するも、タイ政府はフェイクニュースだと主張している。
パソコンを目の前に、頭の理解が追いつかない。



何が真実で何がそうでないのか、情報が情報を呼び、人々は錯乱状態。
ただ一つ確かに分かることがあるとすれば、世界的に大流行している新型コロナウイルス(COVID-19)が、静かに、でも着実に、もうすぐそこまでやって来ている。
新型コロナウイルス の上陸



2019年 12月某日。
【中国🇨🇳】
・湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」の症状を確認。
2020年1月23日。
【中国🇨🇳】
・中国政府が武漢の都市封鎖を開始。
2020年1月31日。
【世界🌎】
・世界保健機関(WHO)が、新型コロナウイルス(COVID-19)を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」と宣言。
2020年2月27日。
【日本🇯🇵】
・安倍首相が全国すべての小中学校と高校、特別支援学校に3月2日から春休みまで臨時休校を要請。
2020年2月28日。
【世界🌎】
・WHOが、新型コロナウイルスの世界的危険度を最高レベルの「非常に高い」に引き上げ。
2020年3月11日。
【世界🌎】
・WHO事務局長が、新型コロナウイルスを「パンデミック(世界的な大流行)」と表明。
2020年3月13日。
【アメリカ🇺🇸】
・トランプ大統領が「国家非常事態宣言」を発表。
2020年3月14日。
【スペイン🇪🇸】
・サンチェス首相が「非常事態宣言」を発表。生活必需品などの買い物を除く外出を制限。
2020年3月18日。
【タイ🇹🇭】
・タイ渡航時に非コロナ感染詳明および10万ドル以上の保険付与が提示できない場合、タイへの入国禁止を発表。
2020年3月20日。
【世界🌎】
・世界約160の国と地域で24万人を超える感染者を確認。死者が1万人を超える。
【アメリカ🇺🇸】
・国務省が全世界でビザの発給を停止。米NY州が22日から全労働者出勤停止を発表。



世界中の多くの国が海外からの入国に制限・禁止を発表する中、僕が住むこの国タイでも、政府が、多くの外国人の来泰が予想される4月のソンクラーン(水掛祭り)の延期を発表した。
突然、僕のドバイ旅行が奪われてしまった。



もっと可哀想なのは日本の学校に通う学生たちだ。
日本の学生の多くは、突然の学校休校の発表に、一生に一度の卒業式や入学式の中止を余儀なくされた。
あと30日間、毎日のように友達に会えると思っていた学生が、「明日から急に学校がなくなりました」なんて言われたんだ。
その悲しさは計り知れない。



僕たちはいつから明日が来ることを当たり前のように錯覚してしまっていたのだろう。
当たり前のように約束されていると思っていた明日は、全然当たり前なんかじゃなかった。
余命を全うできなかった桜良



そういえば、『君の膵臓をたべたい
主人公の友人(桜良)が、膵臓の病気によって余命を宣告されるんだけれど、彼女はある日突然、余命を全うすることもできずに命を失ってしまう。
「残り少ない命を、図書館の片づけなんかに使っていいの?」
「私も君も変わんないよ、きっと。一日の価値は全部一緒なんだから。」
自分の時間より桜良の時間を大切に考える主人公(僕)の質問に、作中で桜良が答えるこのセリフが、大学4年生の自分にズシンと重く響いたのを久しぶりに思い出した。
100日後に死ぬワニ



コロナ騒動と時を同じくして3月20日。
これまで数ヶ月間あらゆる話題を欲しいままにしてきた「コロナ」とは別に、日本は、ある動物の話で盛り上がっていた。
『100日後に死ぬワニ』というタイトルで有名になったその動物(ワニ)は、きくちゆうきさんという漫画家によって1日1話のペースで連載されていた4コマ漫画の主人公だ。
「100日後に死ぬことを知らない主人公(ワニ)」を、「100日後に死ぬことを知っている読者」が暖かく見守るこの構図は、作品の特性としても新しく、ネット上で多くの反響を呼んだ。
作中のワニは、連載100日目、友人と花見を約束していた当日に、ひよこの命を助ける代わりに自らの命を落としてしまう。
『100日後に死ぬワニ』が連載された100日間の中では、ワニが1年待ちの商品を購入する様子や、連載中の漫画の最後を楽しみにする様子、気になる人を頑張ってデートに誘う様子、「人はそんな簡単に死なねーよ」という友人の言葉に笑う様子、8時間働いて稼いだ8,000円で悩んだ挙句ラーメン屋に行く様子、などなど、死ぬことを知らないで生きている毎日の様子が丁寧に描かれている。
もしこのワニが100日後に死ぬことを知っていたら、ワニは同じように生きただろうか。
友人を亡くした大学1年の春



『100日後に死ぬワニ』の結末を読んで、大学に入学したての春、これから仲良くなっていくんだろうな、と思っていた友人が、突然バイク事故を起こして亡くなってしまったことを思い出した。
きっと彼は、これからの4年間を楽しみにしていたはずだ。
僕が当たり前のように過ごした4年間は、彼には訪れなかった。
明日が来ることは全然当たり前じゃない。
少しではない後悔を昨日に残しながら



ショッピングモールで買ってきた食料品がこれだけ大切に思えたのは初めてだ。命綱だ。
何が起こるか分からない明日を想像しながら、人々はニュースを前に、今日も自分の命を全うしている。
きっと、少しではない後悔を昨日に残しながら。
コロナ、早くおさまると良いなぁ。
※本記事の画像は全てイメージです。