タイのパタヤでウズベキスタン人がトラウマになった話



タイのパタヤでウズベキスタン人がトラウマになった話


■□『コラム第18回目』■□

▶︎この記事の執筆者:たくぼく(@takuboku1018

 




先日、タイのパタヤを訪れた時の話だ。

パタヤとは、タイの首都バンコクから車で2時間ほどの距離にあるリゾート地だ。

タイに住んで10ヵ月。

パタヤには一度行ったことはあったものの、あの有名なウォーキングストリートへはまだ行ったことがなかった。

思い立ったが吉日、ということで僕はパタヤに行ってみることにした。


👉後日、ウォーキングストリートのクラブ紹介記事を書きました



日本人は怖がられる


パタヤに着いたらまずはチェックイン。
あらかじめ予約していたホテルに辿り着き、チェックインを済ませる。

ロビーには多くの人がいた。

連日報道中の新型コロナウイルスを気にしてか、僕がパスポートを出して日本人だとわかると、ホテルのスタッフは顔をしかめた。

世界でもコロナ感染者が多い日本人は、どこの国でも敬遠されている。



「いつタイに来たんだ?」

「10ヵ月前だよ。僕はタイに住んでいるんだ」

最近流暢に話せるようになってきたタイ語を使ってそう答えると、スタッフはパスポートの入国スタンプとワークパーミット(就労ビザ)の印を見つけて、僕に微笑んだ。

「君のワークパーミットは2年も期限があるのか!私は1年だよ」

どうやらこのスタッフもタイ人というわけではないらしい。

スタッフの不安をかき消すことに成功し、無事にチェックイン。僕は部屋に着くなり荷物をまとめて、早速パタヤの街を散策する為の準備を始めた。



ウズベキスタン人との出会い


部屋を出ると、ある青年に声をかけられた。

これが僕と彼との出会いだった。

「やあ!君はどこから来たんだい?」
「日本だよ(タイに住んでるけど)。君は?」
「そうか〜、僕はウズベキスタンさ!最近日本はどうだい?ほら、コロナがすごいだろ?」

周りの人の視線が一気にこちらに向いたことが分かった。

分かってる。みんな僕が怖いんだろう。


「ああ〜、確かにすごいね。連日コロナのニュースばかりだよ。ウズベキスタンはどう?」

ウズベキスタンって中東のどこにあったっけ?

「この前感染者が一人見つかったんだ。もうパニックさ」

ああ、ここか。中東の国ってあやふやになるんだよな〜。

「ところで、どこに行くんだい?今はまだ暑いから今外に出たら溶けちゃうよ。もう少し待ったら日が暮れる。そしたら僕がパタヤの街を案内してあげることもできる。あと30分待ってみたらどうだい?」




時計をみると、既に時間は18:00を過ぎていた。
それもそうだな。あと30分もすれば日も暮れて涼しくなる。

「そうだね、待つことにするよ」

僕は彼の好意に甘えて、彼に案内を頼むことにした。




あいつ、レイプしてるから気をつけてね


待っている間、彼は食事に誘ってくれた。
食事といっても、どこかに出かけるわけではなく、ロビーで彼の買って来たものを二人でつまんだ。

食パンとレタスとトマトと魚の缶詰。

せっかく旅行に来ているんだから外で食べたい、という思いを抑え、彼の好意を無下にしては悪いと思い、一緒に食べることにした。


そうして僕らはいくつか話をした。

彼はウズベキスタン人だけど、今はマレーシアで学生をしているということ。
ビザの関係で一度国を出なければいけなくなって、急遽タイにやってきたこと。両親を心配させちゃ悪いから両親には内緒なこと。


年上だと思われた彼は、まだ21才だった。


食事を終えると、そろそろ30分も経ったので、彼は出かける準備をする為に部屋に戻って行った。
僕はというと、特段準備するものもないので、ロビーで待つことにした。

すると、一人の女性に声をかけられる。

「あなたはどこ出身?」
「日本です。あなたは?」
「私も日本よ。」

おお、旅先で日本人に会うとはテンションが上がる。


「あなた、彼と出かけるの?気をつけたほうがいいよ。彼、昨日ホテルに宿泊していた女の子をレイプしてるから。あそこのトイレで。」

んん??????

思考が追いつかないまま、彼が部屋から出て来たのが分かった。


出かける準備ができたのだろう。

「さあ、行こうか。貴重品は全て持ったかい?海外は危ないからね。無くさないように気をつけてね」

断る間も無く、僕らはホテルを後にした。



(さあ、行こうか。貴重品は全て持ったかい?海外は危ないからね。無くさないように気をつけてね)



取り留めもない彼の言葉が頭を反芻する。
心配そうに見つめる彼女の顔が脳裏に焼き付いて離れない。




僕はああいうのを見ていられないんだ


「さあ、どこに行こうか、ビーチ?ゴーゴーバー?クラブ?ここのクラブは最高だよ」

僕は彼に言われるがままに、ついて行くことにした。


最悪、英語が話せないわけじゃないし、タイ語だって少しなら話せる。
そんなに怖がることじゃない。
世界中を旅する中で何度か危険な目に遭ってきたことはあるけど、全部自分で何とかしてきた。

別に怖がることはない。


僕らは歩きながら、また少し会話をした。

タイは空気が汚くて好きじゃないんだということ。
彼は大学を卒業しても、マレーシアに住み続けて起業をしたいという夢があるんだということ。
就職は誰かの下に就くことになるわけだから、お金も自由も手に入らないから嫌なんだということ。

どれも最近自分が考えていることばかりで妙に共感したのを覚えている。

しばらくすると、道端でお金をねだったいる小さな女の子に出会った。
タイでは日常茶飯事の出来事だ。


彼は、「小さなお金はあるか?」と聞いた。
「もちろんあるさ」僕は20バーツを彼女にあげた。

僕らはしばらくすると、今度は3〜4人の似たような子供達を見つけた。

「困った、もう小さいお金ないよ」
「セブンイレブンに行って崩してもらう?」
「名案だね」

僕らはセブンイレブンに行って、お金を崩してもらった。彼は水と菓子パンを買って、小さな女の子に渡していた。

「僕はさ、ああいうのを見ていられないんだ」

何だ、すげーいい奴じゃん。
僕は彼への不信感を忘れていった。



彼のおすすめのロシア人ゴーゴーバーへ


彼が、おすすめのゴーゴーバーがあるなんて言うもんだから、一緒について行くことにした。

「ロシア人は好きか?ロシア人は好きか?」としきりに聞いてくるもんだから、おそらく彼はロシア人が大好きなんだろう。

年末にロシアに行ったときの苦い思い出を頭の中で振り払って、「ロシア人は綺麗だよね」と返しておいた。

「ここさ」

着いたのは、案の定ロシア人で運営されているゴーゴーバー。

まあ、いっか。
僕は入店を決意した。




現れた彼の本性


知らない人のために解説しておくと、ゴーゴーバーとは、店内のBGMに合わせて、ゴーゴーダンサーと呼ばれる女性がポールダンスやちょっとしたショーを見せてくれるバー、ナイトクラブのことである。

ゴーゴーバーは、入店したら飲み物を注文するルールの為、彼はオレンジジュースを、僕はLEO(タイのビール)を頼んだ。

彼は大好きなロシア人に会えて嬉しいのか、ご満悦。
僕は、大柄なロシア人女性があまり好みではなく、目の前のLEOを早く飲み干すことだけを考えていた。

ご満悦中の彼は、調子が乗って来たのか、次第にドリンクも頼むようになり、僕らは長時間居座ることになった。

どうやら早く帰りたいのは僕だけらしい。

隣には美しいロシア人女性が座っているが、全然喋らない僕を横に、何だか退屈そうだ。

やっぱりタイ人の方が良いなぁ。


どれだけの時間が経ったろうか。
やっと僕らは店を出ることにして、お会計を頼んだ。

すると彼がこんなことを口にした。
「ごめん、俺、金ないんだよね。払っといてくれる?」


ええ!??

何で金ないのにこの店に入ろうと思った??

財布の中の紙幣が一気に無くなり、行き場のない怒りだけが財布をいっぱいに満たした。




僕は彼から逃げることに決めた


店を出てすぐに彼は、こう言った。
「さあ、次はどこに行こうか?」

どの口が言うんだろう。

なんで見ず知らずの僕にこんなに親切だったのか。
なんで急にパタヤを案内するなどと言い出したのか。
なんで道端の子供にお金をあげる姿を僕に見せたのか。
なんでお金がないのにゴーゴーバーに入店したのか。

思い返せば、全てが伏線だった。

海外では道案内をしてチップをねだられることはよくあるが、ゴーゴーバーのお会計はシャレにならない。

僕は彼から逃げることに決めた。




作戦①腹痛だと嘘をつく


とっさに思いついた作戦は3つだ。

作戦①腹痛だと嘘をついてホテルまで戻る
作戦②金がないなら行かないと申し出る
作戦③全速力ダッシュ


作戦の②や③は、もしも口論になったり捕まってしまったら、リスクが大きい。


(気をつけたほうがいいよ。彼、昨日ホテルに宿泊していた女の子をレイプしてるから、あそこのトイレで。)


あの時声をかけてくれた女性の心配そうな顔が僕の脳裏をかすめる。

できるだけリスクを取りたくない僕は、作戦①で行くことにした。
ホテルに帰ってしまえば、何とかなる。



「ごめん、お腹が痛いんだ。一度ホテルまで戻らない?」
「近くのトイレに行こうか」
「いや、ホテルが良いんだ。ホテルだと治る気がする。ホテルで少し休みたい」
「何でだよ。ここからホテルまで遠いぞ」

僕は自分でもよくわからない言い訳をしながら、ホテルの方向に歩き出した。

彼は仕方なくついてきた。




僕とトイレと彼の電話


ホテルに着くと、彼は「30分後にもう一度出かけよう」と僕を催促する。

「わかった、30分後ね」と答えて僕はトイレに駆け込んだ。

彼はトイレのすぐ外で待っている。

チャンスは来ないか、、。


すると、彼が電話をする声が聞こえてきた。

「もう少し待ってって。今、ホテルにいるから。今、休憩中なんだよ。30分したら行くからさ。お金?お金はないよ。大丈夫。3万バーツ(≒10万円)ちゃんと返すから」

んん????

僕は耐えかねてトイレを出ることにした。



すると、僕に気がついたのか、すぐに電話を切った彼が、笑顔でこう話しかけてきた。

「明日の朝、暇?朝6時にさ、会わせたい人がいるんだ。一緒に日の出を観に行こう」

・・・。
人気のない時間帯に、たった数時間前に知り合った僕に会わせたい人がいるだって?

そんなバカな話があるか。
さしずめ、君は僕に借金を払わせたいんだろう?
そもそもマレーシアに住んでいる君が何でタイで借金をしている?



(さあ、行こうか。貴重品は全て持ったかい?海外は危ないからね。無くさないように気をつけてね)

(気をつけたほうがいいよ。彼、昨日ホテルに宿泊していた女の子をレイプしてるから、あそこのトイレで。)


点と点が繋がった気がした。


とりあえず隙が欲しい僕は、「もう少し休む」と言って部屋に戻ることにした。

「30分後な」 バタン。

彼も部屋に戻る音がした。




作戦変更


彼が部屋に戻ったのを確認して、僕は1分も待たずに部屋を飛び出した。

作戦変更だ。

作戦③全速力ダッシュ

多分このままだと30分後、ホテルにいたら僕は逃げきれない。

部屋もバレてる。
もうあのホテルは安全じゃない。

僕は一目散に人気のない方向に走り出した。



薄暗い夜の町吹く風がひやりと冷たい。

俺ってこんなに速く走れたっけ。

せっかくパタヤに来たんだ。
まだまだやりたいことがたくさんある。


ハードロックホテルの泡パーティーに参加してみたいし、クラブもはしごしてみたいし、ロシア人じゃなくてタイ人のゴーゴーバーにも行ってみたい。


でも、その前に新しいホテルを探さなければ。
“逃げろ” と僕の中の何かが悲鳴をあげる。



彼に見つかってはならない。
知られてはならない。

できるだけ、速く。
できるだけ、遠くに。



僕は、頭の中で想像しうる最悪の結末を振り払って、パタヤの街を全速力で駆け抜けた。



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ABOUTこの記事をかいた人

名前:たくぼく 1995年生まれ。バンコク在住。TOPIX Core30に勤務。インドネシア、タイに在住経験。海外渡航17カ国。ヒッチハイク6,455km(91台)。TOEIC900を取得した英語の勉強法と国内外の旅情報を発信します。 【趣味】旅行/カメラ/邦ロック 【特技】MAHOUT(ラオス象使い)/タイ古式マッサージ 【座右の銘】雲は天才である -石川啄木-